前回からのつづき
「上手さ」と言ってもいろいろですが、ここで言う「上手さ」とは、言い換えると「テクニック」ということだと思ってください。
ざっくり言えば、素早く、繊細かつ大胆な身体のコントロールをもってして、ミスのない演奏をするということです。
それを極めんとする高いレベルのパフォーマンスは、確かに聴く人の感動を呼ぶものですが、このスクールは、音楽を趣味として楽しむ大人のためのものですので、聴く人を感動させられるかどうかより、まず本人が楽しめているかどうかということを重んじていきます。
そこで、まず最初に、マインドセットしていただきたいことがあります。
それは「周囲からの視線や評価」そして「他人との比較」についてです。
自分の歌唱や演奏を聴いた第三者が、「カッコイイね!素敵だね!」と言ってくれたら、それはもちろん嬉しいですが、逆の感想を抱く可能性を考えると、歌声や演奏を聴かれることに強い抵抗感が生まれます。
上手くなるまでは人に聴かせたくない、という気持ちですね。
これ、私もありましたし、ときに今でもそういう気持ちと葛藤しています。
でも、中には、そんなことを気にもせずに自分の歌声や演奏を、ある意味「さらけ出せる」ような方もいらっしゃいますね。
そんなマインドの方を見ると羨ましく思います。
失敗したり恥をかくことを怖がらないというのは、すごく大事な姿勢だと思います。
また、自分はまだまだ下手くそだ、という思いは、およそ本人による他人との比較からくるものです。
そういった気負いがないということは、外野を無視して、素直に音楽に向き合うことにも繋がっていきます。
音楽に限らず、とかく人の目を気にしたり他人と比較しがちなのは、この国の文化なのか時代性なのかわかりませんが、この、周囲に向きがちな意識を、純粋に音楽に対してのみ向けていくことができれば、それこそが「音楽を楽しむための力」のもっとも核になるものだとも言えます。
写真は本文と関係なくて申し訳ないですが、現代最高のジャズトランペッター、ロイ・ハーグローブを偲んで。