前回書き漏らしてしまった肝心なことについて。
それは音名についてです。
以前のコラムを読んでいただいた方には重複する内容にはなりますが、読んでいないという方はぜひそちらも合わせてお読みください。
まず、1つ1つの音の名前にはA~Gのアルファベットを使います。
「音の名前と言えばドレミじゃないの?」と思った方も多いでしょうが、ドレミは階名と言って、また違った性質の名前として使います。
音名は
上向きに
A, A#, B, C, C#, D, D#, E, F, F#, G, G#, A
下向きに
A, A♭, G, G♭, F, E, E♭, D, D♭, C, B, B♭, A
という順で、ト音記号の場合、下加線1本目の音符がCとなります。
で、ピアノやギターならお話はここまでなんですが、サックスの場合そうはいかないんですね。
すでにサックスを吹かれている方はご存知かと思いますが、サックスをはじめトランペットやクラリネットなどの管楽器は移調楽器と言って、その楽器内での音名と一般的な(ピアノやギターなどの)音名とでは、実際に発音したときに音高にズレがあります。
例えばアルトサックスでCを発音すると、一般的な音名(コンサートキーと言います。)ではE♭の高さの音が鳴ります。テナーサックスやソプラノサックスでは、これがB♭になります。
ややこしいですよね。
サックス用のパート譜を吹いている分にはいいんですが、ピアノやギターなど他の楽器とセッションしようとすると、かなり煩わしい点だと思います。
実際のところ、上記の階名(ドレミ)で音を聴き取ったり歌ったりといった練習をしていくことで、自然とこの音名のズレも自分の中で折り合いをつけていけるようになっていきます。
が、最初はどうしても仕方がないです。
そこで、これからサックスを始められる方で、吹奏楽や室内楽といったパート譜を見て演奏するような形態ではなく、ジャズやポップスなどをピアノ、ギター、ベースといった楽器と一緒に演奏することがやりたいのなら、アルトサックスのCをE♭として、テナーやソプラノのCはB♭として初めから覚えてしまってもいいと私は考えています。
そうすると、ピアノやギターの人が認識しているのと同じ音名で同じ高さの音が吹けるわけです。ズレが生じない。
反対意見もあるでしょうが、これからサックスを始められる方がジャズやポップスをバンド形態で楽しもうとしたとき、どうせ読み替えなければならない音名をいったん覚えるということに、いったい何の意味があるのか…。
そのかわり、市販のサックス用の譜面などを見て吹くと今度はそっちがズレます。そこは自分でズレを補完しなければなりません。
ヴォーカル用、フルート用、ピアノ用の楽譜であればそのままで大丈夫です。
どちらで覚えても、ズレが生じる場合にそれを補完し自分の中で折り合いをつけていく必要があり、その力は自然とついてくるはずです。
階名の練習をしていけば……!
あともう1つ。
絶対音感がある方は、おそらくコンサートキーで音名を認識しているでしょうから、やはり少し戸惑うかもしれませんね。でも私の知る限り、小さい頃のピアノレッスンなどを通じて絶対音感を身につけた方はおよそドレミで音名を歌っていますね。ですから、どちらかというと階名としてドレミを使うということの方が最初は難しさを感じるかもしれません。
絶対音感がある方も、ジャズやポップスをバンドでやりたいのであれば、アルトサックスのCをE♭として、テナーやソプラノのCはB♭として覚えてしまって良いかと思います。