前回からのつづき
歌を唄うということに関しては必ずしも当てはまらないかもしれませんが、運動を記憶する、もしくは視覚情報を運動に置き換える、という演奏の仕方をしている方に多く見られる現象があります。
それは、一度できたと思った曲を、そののちに、いつでもどこでも再現できるかというと、なかなか難しくなってしまうということです。
運動を記憶するというのは、例えば電車に乗ったり、歯を磨いたり、携帯電話を使ったり、普段から頻繁に何度も何度もすることで、その記憶が定着します。
つまり、ある一曲を集中して繰り返し練習している間は良いのですが、終わりまでさらったところでいったんその曲から離れてしまうと、時間の経過とともに記憶が薄れていき、やがて思い出せなくなってしまうのです。
まあ、当たり前と言えば当たり前ですね。
また、視覚情報を運動に置き換えて演奏をしている、つまり視覚に頼って演奏をしている方は、当然、楽譜がないと演奏がままなりません。気ままにいろんな曲を演奏しようと思ったら、常に分厚い楽譜集を備えていなければなりません。(スマホやタブレットなど携帯に便利なものも普及していますが。)
誤解なきように言っておきますが、音楽をやるうえで、運動を記憶したり、視覚を頼りにすることは、多分にあることだと思います。
問題は、それだけに頼ってしまうということです。
では他に何に頼れるでしょうか。
どうですか?
やろうとしているのは音楽ですよ。
そうです。「音」です。
「耳」と言っても良いですね。
運動だけでなく、音を記憶します。
視覚だけでなく、聴覚に頼ります。
今現在、すでに楽器を嗜んでいる方のほぼ全員が、演奏できる曲の数より、歌える(口ずさめる)曲の数の方が圧倒的に多いはずです。
それは、何回も聴いた曲を、音で記憶しているからですよね。
運動ではとてもじゃないけど記憶しきれない量の情報を、音としては記憶しているのです。
まだ音楽を始めていない、これからだという方も、想像してみてくださいね。