今回はひさしぶりにサックスのお話を。
サックスのカッコいい演奏をイメージしたとき、ブルージーな雰囲気が漂った演奏を思い浮かべる方も少なくないんじゃないでしょうか。
ブルージーさを感じる要素はたくさんあります。
音使い、リズム、音程、音色、強弱、音の長さ、音の繋ぎ方…。
さて、誤解を恐れずに言えば、ブルージーな演奏というのは往々にして、音使いを除いたこれら多くの要素が、
若干ルーズ
だったりします。
逆に機械のように正確・端正だとブルージーさはなかなか出ないのです。
「遊び」と言ってもいいかもしれません。「ハンドルの遊び」の「遊び」。
サックスは、とくに「音程の遊び幅が大きい」という特徴があります。
これはピアノなど他の楽器にはなかなか無い特徴で、サックス以上の音程の遊び幅となると、トロンボーンやヴァイオリン類、そして歌(ヴォーカル)など限られてきます。
そして、こういった音程の遊び幅が大きい楽器(歌)というのは、裏を返せば「音程をとるのが難しい」とも言えます。
そのため、楽器(歌)を始めてからの当面は正確な音程に合わせることが命題となってきます。
確かに音程を正確に合わせようとする意識や、そのためのコントロール力をつけることは重要ですが、それだけを突き詰めていくといつしか、「機械のように正確なことこそすべて」という考えにいたる可能性がなきにしもあらずです。
あくまで「好みの問題」なので、正確な演奏をまったく否定はしませんが、
せっかくある遊び幅を使って表現の幅を広げていくのも面白いのではないでしょうか。
例えば、ジャズやブルースはもちろんのこと、ファンクやロックでも「ブルーノート」と呼ばれる音をよく使います。
この音は、ざっくりした説明としては「メジャースケールの3rd、5th、7thをそれぞれ♭3rd、♭5th、♭7thにしたもの」となりますが、厳密に言えば半音下げるのではなく「ほんのちょっと下げる」となります。
半音よりもちょっと。
ですから、西洋式の12音平均律(ピアノのような均等な半音からなる調律)には無い音程ということです。
しかし!サックスは、ベンドという音程を上下に変化させるテクニックを使って絶妙な音程にコントロールできるんですね。
わ〜〜い。
ブルーノートの音程を数値化して確認するのも悪くないと思いますが、けっきょくのところ「ブルージーな雰囲気」がイメージできていることが重要です。
そのためにはやはり、そういった演奏をたくさん聴くことが大切でしょう。
また、アンブシュアについては、正確な音程に合わせ、それを維持しようと練習している過程で、ガチガチに固めてしまう方も少なくないと思います。
ですが、これを後からほぐして柔軟にするのはちょっと骨が折れることになります。
できたら、音程の遊び幅があることを悪いこととは捉えず、その遊び幅を狭めることなく音程をコントロール・維持できるようにしていけるといいですね。