ひさしぶりにサックスについて書いてみます。
すでにサックスを吹かれている方はご存知だとは思いますが、
サックスは移調楽器です。
移調楽器とは何か。
これは例えば、サックスでCの音を吹いても、ピアノやギターなどのいわゆる通常のCとは異なる高さの音が鳴る、ということです。
楽譜に記された音と実際に演奏して鳴る音が異なる楽器、とも言えます。
サックスだけでなく、トランペットやトロンボーン、クラリネット等も移調楽器です。
管楽器に移調楽器が多いのは、その構造によるものだと言われています。(管楽器でもフルートなど移調楽器でないものもあります。)
それに対し、ピアノやギターなど実音名で演奏する楽器のキーをコンサートキーと言います。
コンサートキーは、A4(ピアノの鍵盤では真ん中より少し右にあるAの音)を440Hz〜442Hzほどでチューニングします。
ちなみにギターは、楽譜に記された音と実際に弾いて鳴る音とでは1オクターブの違いがあり、厳密に言えば移調楽器ということになりますが、音名(CとかGとか)が変わることはないので、ここではコンサートキーだということにします。
なぜ移調楽器というややこしいものが定着しているのか、それはまたの機会に書いてみるとして、とにかくもう、サックスが「そういうもの」であるのはしょうがないですから、今回はそれにどう対応していくといいか?を考えてみたいと思います。
まず整理すると、アルトサックスやバリトンサックスなどE♭管と呼ばれる楽器は、その楽器のCおよびE♭管用の楽譜に記されたCの音を吹くと、実音(コンサートキーの音名)のE♭の音がなります。
同様にテナーサックスやソプラノサックスなどB♭管と呼ばれる楽器は、その楽器のCおよびB♭管用の楽譜に記されたCの音を吹くと、実音(コンサートキー)のB♭の音がなります。
さて、すでにサックスを吹かれているあなた、そしてとくにこれからサックスを始めてみようと思っていらっしゃるあなたは、サックスでどんな演奏をしたいですか?
これから書くことを1つの考え方として参考にしていただければ幸いです。
「吹奏楽(ブラスバンド)もしくはクラシックがやりたい」
吹奏楽(ブラスバンド)やクラシックなど、編成に異なるたくさんの移調楽器が入っている場合、そして基本的にはガッチリ編曲された曲を楽譜どおりに演奏する場合は、E♭管用およびB♭管用のパート譜を見て演奏するので、さほど問題はありません。
問題があるとすれば、幼い頃にいわゆる絶対音感を身につけた方にとっては、楽譜上・運指上の音名と実際に鳴る音とが違うことによる混乱が考えられます。
私自身は絶対音感がありませんしクラシックとなると畑違いですので、あんまり適当なことは言えませんが、おそらくは慣れていただくしかないかと思います。大変でしょうけど…。
「ロック、ポップス、ジャズコンボまたはそれ系のバンドやセッションがしたい」
ちょっと考えてみたいのは、これらの「主にピアノやギター、ベースといったコンサートキーの楽器、そしてヴォーカルと一緒に演奏する場合」についてです。
例えば、自分以外に移調楽器を演奏する人がいないとき、自分用の移調されたパート譜をバンドメンバーや他の誰かが用意してくれる、ということはほとんど無いと思います。
パート譜を用意してくれたとしても、その楽譜はコンサートキーで書かれたものでしょう。
もし、わざわざサックス用に移調した楽譜を書いてくれるスーパー親切な人がいたら、その人のことは大切にしましょう。
そもそもロックやポップスでは譜面を使って演奏したりやり取りしたりしないことも多く、口頭での音名のやり取りは当然実音名(コンサートキーの音名)ということになります。
これがじつに悩ましい。
コンサートキーで書かれた楽譜はすべて移調して書き直すか、脳内で変換(移調)しなければなりません。
口頭でのコミュニケーションでも、脳内での変換(移調)が必要になります。
長年そういうジャンルでサックスを吹いている人はもう慣れてしまっているかもしれませんが、はっきり言ってめんどくさいです。
そこで、吹奏楽やクラシックも吹きたいという方には当てはまりませんが、当面はポップスやジャズばかりを吹きたいと思っている方で、とくにこれからサックスを始めようと思っていらっしゃる方には、
初めから実音名(コンサートキーの音名)でサックスの運指を覚えてみてはどうか
と、私は思うわけです。
だって、最初に一生懸命覚えた運指をわざわざ変換して(読み替えて)演奏する意味が、あんまり分からないんですもん。
あんまりっていうか、ぜんぜん分からない。
実際に実音名で音を認識しているプレイヤーは、少数派ですがプロにもアマチュアにもいます。
でも、初心者に対するレッスンで、そうやって説明してくれる講師ってほとんどいないような気がします。
なんでかって?
自分(講師)がそうしてきていないから。というのがおおかたの理由でしょう。
そして、もし生徒さんが実音名(コンサートキーの音名)で運指を覚えた場合、講師は常に脳内で変換(移調)しながらレッスンしなければならないからです。大変だってことですね。
ちなみに私も最初は、当然のように移調されたサックス標準の音名で運指を覚えました。
しかし、真剣に生徒さんのこれからの音楽ライフが楽しいものになるようにと考えるのならば、場合によっては自分とまったく同じやり方でなくていい、そうでない方がいいことだってあるのではないでしょうか…。
それによってレッスンで自分(講師)が苦労することになろうとも、そこは進んで苦労しましょうよ。と、思ってしまう。
ちょっと話が逸れてしまいました。
ていうかですね!
もっと言えば、私がいつも推している「移動ドでのソルフェージュ(階名唱)」をしていけば、移調楽器かコンサートキーか、という違いはさほど大きな問題じゃなくなっていくはずです。
相対音感を使ってサックスを吹く、ということですね。
先日、たまたまYoutubeで見た本田雅人さんの動画でも、本田さん自身が相対音感を使うことで移調楽器であるサックスを自在に操っていると語られていました。
本田雅人さんといえば押しも押されぬ日本のトッププレイヤー。
動画では視聴者にそれを強く勧めることはしていませんでしたが、似たようなことを本田さんも考えていて嬉しかったです。
長くなったので終わります。