音楽理論講座の10回目です。
・キー (Key) とは
前回の演劇の例えをそのまま用いてみると、
音楽の「キー」とは、どんな演目なのか、喜劇なのか、悲劇なのか、主役は誰なのか、を一言で言い表したものです。
「エディー・マーフィー主演のコメディ」という感じで。
「喜劇なのか、悲劇なのか」が音楽では「メジャーキー(長調)かマイナーキー(短調)か」となります。
ざっくりと、メジャーキーの音楽は明るく、マイナーキーの音楽はもの悲しい。
でも、笑えて泣けるような劇もありますね。音楽でもメジャーキーかマイナーキーかがはっきりしないようなものもあります。
・トーナルセンター
で、この主役だけを指すものを音楽では「トーナルセンター」と言います。
「トーナルセンターはB♭ね」というのが、「主役はエディー・マーフィーね」と同義です。
でも、上記の「キー」という表現の中に主役が誰なのかも含まれているので、音楽をやっていると「トーナルセンターは何?(主役は誰?)」よりも「キーは何?(どんな演目?(主役がだれかも含む問い))」というやり取りの方が一般的ですね。
・音の数
さて、主役を決めて劇を始めていきたいわけですが、そもそもこの劇団、劇団員は何人いると思いますか?
……はい。12人です。
音域の広いピアノでも、「1オクターブごとのまとまり」が何度も繰り返されているだけでした。つまりそれぞれに音名がつけられた音は12個しかない。※異名同音(C♯とD♭など)は、それで1つと数えます。
A, A#/B♭, B, C, C#/D♭, D, D#/E♭, E, F, F#/G♭, G, G#/A♭
この12個です。これが12人の劇団員。
ただし、1つの演目につき、12人全員が出演するようなことはまずありません。
登場人物が多すぎてわけわからなくなっちゃう。
劇や映画では、やたらと登場人物が多い群像劇もありますが、やっぱり主役、脇役、モブ、特別出演のちょい役とかに分けられますもんね。
12人みんなが主役!となると、音楽では、前回お話した無調音楽になってしまいます。
では何人くらいが適当かというと……。
7人です。
(場合によってはもっと少ないこともありますが、基本は7人と思ってください。)
その7人は、誰が主役で、喜劇なのか悲劇なのか、によって12人の内から選抜されます。
つまり「キーによって、使われる7音が決まってくる」ということです。
「トミー・リー・ジョーンズ主演のアクションコメディだったら、相棒はウィル・スミスで決まりでしょ!んでヒロイン役が・・・」といった具合に決まってくる、と。
・ダイアトニックノート
ここで、悲しい劇、つまりマイナーキーについては、いったん脇に置いておいてお話を進めます。
喜劇、つまりメジャーキーの場合、主役であるトーナルセンターを基準のDoとし、インターバルがDo Re Mi Fa Sol La Tiとなる音を確認しましょう。
それが7人のキャストというわけです。
この7人のキャストをまとめて、「ダイアトニックノート」と言います。
では例題。
「Aメジャーキーのダイアトニックノートは何でしょう」
答えは、A, B, C#, D, E, F#, G# の7音です。
もういっちょいきましょうか。
「E♭メジャーキーのダイアトニックノートは何でしょう」
答えは、E♭, F, G, A♭, B♭, C, D の7音です。
大丈夫ですかね?
こんな感じで、いろいろなメジャーキーのダイアトニックノート、つまり主役が変わったときのキャスト7人は誰になるのかをチェックしてみてください。