前回、いろいろなサイズのフルートをご紹介しましたが、ここからはコンサートサイズのいわゆる普通のフルートについて、もう少し細かくお話ししていきます。
すでにお話ししたように、最初、フルートは木製でした。
当時、単にフルートと言うとそれは縦笛を指していて、「横向き」と言う意味の「トラヴェルソ」を付けたフラウト・トラヴェルソが、前身の楽器だそうです。
もっとも、横笛自体は古くから世界各地に存在していて、日本では篠笛などがそれにあたります。
ヨーロッパでは19世紀、ドイツ人のテオバルト・ベームという人が「ベーム式」と言われる金属製の横笛を作り、それが今のフルートと呼ばれるものになりました。
金属製でも木管楽器に分類され、エアリードという仕組みで発音します。
頭部管、胴部管、足部管の3つの管をつなぎ合わせて1本の楽器になります。
頭部管には吹き口が、胴部管と足部管にはたくさんの穴と、それを塞ぐパッドやキーが付いています。
国内外の各メーカーからいろんなモデルが売られていますが、それらにどんな違いがあるのでしょうか。
今回は素材について。
ひとくちに金属製といってもその素材はいろいろです。
洋銀製
もっとも材料が安く、加工しやすく、つまりコストが低く、重量が軽く、発音時の反応も軽いのが「洋銀製」の楽器です。
洋銀とは、銅や亜鉛やニッケルの混ぜ物(合金)です。
銀のメッキがかけられている場合がほとんどです。
楽器自体も比較的安価なので、初心者用とか、程度の低い楽器とか、そんなふうに思われがちですが、そんなことはありません。
大巨匠マルセル・モイーズが、生涯通して洋銀製のフルートを愛用し続けたというのは有名な話。
銀製
フルートの素材としてスタンダードと言えるのが銀です。
ベーム式の開発者であるベーム自身も銀を想定してフルートを作ったらしいです。
銀は貴金属なので、洋銀よりは若干高価になってしまいます。
銀と言っても純銀ではなく、925とかのいわゆるスターリングシルバーがほとんどです。シルバーアクセサリーになってるやつですね。
楽器によっては、洋銀をベースに、リッププレートだけ銀、頭部管だけ銀、キーメカニズム以外は銀というように、ある部分だけを銀製にしているモデルもたくさんあります。
すべて銀でできた総銀となると、洋銀に比べ若干重く、発音時の息の圧力が多少必要な気がしますが、そのぶん懐の深い表現がしやすいように思います。
使っていると酸化して表面が黒ずんでいくので、ピカピカを維持したければこまめに拭いてあげてください。
銀の管体やパーツに、金やプラチナのメッキがされているものもあります。
金製
金製の楽器にははいろいろな純度があります。9金、14金、18金と。
純度が高い24金とかになると……流石にめっちゃ高価です。そして重い。
今や、クラシック音楽およびオーケストラで演奏するプロのフルート奏者の多くは金の楽器を使っていますね。
純度が高いものの輝きは半端ないです。放っておいても半永久的にピカピカです。
しかし純度が高くなると、柔らかくもなっていくので取り扱いには注意です。
音は好みによりますが、倍音が多く遠鳴りする(コンサートホールの後ろの方まで音がよく届く)と言われています。
プラチナ製
え~~~~、高いっす。
プラチナは(金も)日々相場が変わるので、いわゆる時価というやつですが、余裕で10,000,000円を超えてきます。「0」多すぎ。
フルートに限らず、あまりにも高価な楽器というのは、実用レベルでの価値(主に音色や操作性など)とは、もはや無関係です。
過度な装飾による工芸品としての価値、歴史的価値、希少価値……そういった価値を求める人たちによって、値段が青天井で釣り上がっていきます。
フルートの場合、貴金属ですからね。そもそも高い。
木製
ベーム式のモダンフルートで、素材が木である楽器です。
ピッコロや他の木管楽器の素材としてよく使われるグラナディラがここでも使われます。
素朴で柔らかい音色。
しっかりケアしないと木が割れてしまうことがあるので注意が必要です。
木製フルートにはちょっと関心があります。
プラスチック製
ちょっとおもちゃみたいな扱いになってしまいますが、プラスチック製のフルートもあります。
やや特殊な吹きごこち。ポヘ~~とした音。
でも、これはこれで面白い。
多少なりともラフに使えるので、アウトドアとかにはいいかも。
さて、
高価な素材の楽器ほど良い音がする
……ワケではありません。
つい勘違いしがちになってしまいますが。
個人的にはやっぱり総銀が好きです。
初心者の方には、洋銀の楽器や、頭部管が銀で胴・足部管が洋銀の楽器もオススメです。
結局はご自分の選んだ楽器を大切に、よく吹いていくことが大事だと思います。