次に、「良い音」と「良い演奏」について。
「良い音」と「良い演奏」は似ているようで違います。
結論から言ってしまえば
「良い演奏」の中の要素として「良い音」があります。
「良い演奏」をしているプレイヤーの音は「良い音」であることが多いでしょう。
では反対に、
「良い音」ということはイコール「良い演奏」となり得るのでしょうか……。
例えば、声が良い人っていますよね。まぁ、これも好みですが。
でも、その声が良い人の「歌」が良い(好き)とは限りません。
「私、サックスの音がだ~~いスキ!」
という方もいらっしゃると思いますが、だいたいの場合は「純粋に1音ごとの音色そのもの」を聴いて好きと思えているのではなく、発音の仕方、音と音のつながり方、音の終わり方、強弱や音程の変化、リズムの取り方…などさまざまな音楽的な要素が組み合わさった状態を聴いて、好き!と思えているのではないでしょうか。
以前どこかで聞いた話ですが、
トッププロと、ある程度まっすぐな音で吹けるようになった初級レベルのプレイヤーとで「純粋に音色のみ」を比較すると、あまり大きな違いはない
らしいです。
ちょっとビックリじゃないですか?
真偽のほどは定かじゃありませんが、私は「おそらくは…そうかもしれない」と思っています。
「純粋に音色のみ」とは、ここでは、ある音の立ち上がりとお尻の部分をカットして、吹きのばしている部分だけにするということだとします。
言葉に例えると、子音と音の終わりをカットした状態ですね。
逆に言えば、いかに子音と音の終わらせ方(次の音への繋ぎ方)が大切か、ということです。
ですので私は、
音を単に音として楽しむのでなければ、つまり音楽を奏でるための楽音として使うのであれば、音そのものが良いことよりも、その使い方の方が大事である
ように思うのです。
ここを勘違いすると、「もっと高価な楽器だったら良い音が鳴るのに」とか、「マウスピースやリガチャー、リードを、あの人と同じ物に替えたら、ああいう音が出せるかな」とか、そんなふうにも思いかねません。
でも、きっと「良い音で吹くな~」と思わせる人は、どの楽器でどんなセッティングで吹いても「良い音」を鳴らすことができます。いや、もう少し正確に言えば「良い演奏」をすることができるのです。
「良い音」を鳴らすことこそが目的なのではなく、「良い演奏」をすることが目的・目標であり、「音を良くしていくこと」はそのための手段だ、ということをアタマの片隅に置いておきましょう。