耳コピについて、もう少し書いてみます。
前回書いたように、耳コピをスムーズにこなすには知識と相対音感、そして何と言っても物量(経験値)がものを言うわけです。
でもそもそも、「耳コピをすることが必要か?」「どれほどの重要性があるか?」と思う方もいらっしゃるでしょう。
今は主だった曲であれば、ネットを検索するとコード進行くらいすぐ見つけられます。
ヒット曲やスタンダード曲であれば、ほとんどの場合はこれでこと済んでしまいます。
無料でなかったとしても数百円ほどで楽譜をダウンロードできたりもしますし。
そして、若干知名度の低いアーティストのシングルカットされていない曲(アルバムの中の曲)などは、ネットで探しても見つからないこともありますが、よほどその曲を演奏したい気持ちが強くない限りは、「あ~~、見つからないか……ま、他の曲にするかな…」と諦めてしまうのではないでしょうか。
そうなってくると、耳コピの必要性がどれほどあるのか。
これは、一次的には
「さほど必要でもない」
と言うのが私の答えです。
だって、コード譜、リードシート、バンドスコアなどが手に入る曲を、それを見ながら楽しく演奏すれば良いですもんね。
ところで、私が音楽を始めた当時はインターネットなど無く、今のように曲のコード進行がすぐに判るというのは夢のような話でした。
だから何か曲を演奏したいと思ったら、楽譜を購入するか、耳コピをするか、諦めるか、の三択でした。
私よりも上の世代の方は、売っている楽譜の量ももっと少なかったはずで、耳コピするか、諦めるか、のほぼ二択だったんじゃないかと想像します。
当時の私は耳コピがとにかく苦手でした。もちろん最初から得意な人なんてそうそういるわけもないのですが、とにかく大変で苦痛だった。
だからほとんど耳コピをせずに、楽譜がある曲を演奏していました。楽譜がないものは諦める…というか持っている楽譜の中から演奏したい曲を選ぶ、と。それだけでしたね。
楽譜ってのはもちろん便利なものなんですけど、ある意味においては非常に危なっかしいものでもあります。
なぜか。
それは、音楽を「耳」ではなく「目」で捉えてしまうからです。
耳を育てることも並行して行えればいいのですが、「この曲が演奏したい!」という目先の目標を達成するためには「耳」はさほど重要ではなくなってしまう。
音楽なのに……ですよ?
さて、あくまで私の場合は、ですが、そうやって耳を使うことをおざなりにしたまま曲の練習だけを進めていたら、のちになっていろんな苦労が湧いて出てきました。
まず、曲をいくつも覚えていられない。新しい曲を覚えると、押し出されるように以前覚えた曲は忘れていってしまいます。
そもそも覚えるのに大変たくさんの時間を要する。
そして、人前で演奏するような緊張感のあるシーンでは、頭が真っ白になって覚えたはずのものがブッ飛んでしまう。
さらに、覚えたとおりに曲の初めから最後まで完遂する以外なく、万が一曲の途中で迷子になってしまう(今どこを演奏すべきか分からなくなってしまう)と、演奏に復帰するのがものすごく大変になってしまう。
応用が効かないので、セッション等にはおよび腰になってしまう。
どうですか?
思い当たる方もいらっしゃるんじゃないでしょうか。
これらの症状は、「耳を使って音楽をする」ことで徐々に解消されていくはずです。
そして、耳を使って音楽ができるようにための最も有効な手段の1つが、耳コピをすることだと思うわけです。
ということで、一次的には、つまり演奏したい曲をとりあえず形にするにあたっては楽譜があるのであれば耳コピは必要ない。
けれども、その先ももっともっといろんな曲を演奏し、ライブやセッションをし、音楽を楽しんでいこうとするならば、ぜひ耳コピにトライしてみることをお勧めします。