90年代に入り、次世代の記録メディアとしてソニーが開発したのがMDことミニディスクです。
先に申し上げておきますと、一連の「音楽の記録メディア特集」において、私自身もっとも馴染みのないメディアなのがMDです。
もうホント、数えるほどしか触ったことがありません。
なので、自分の言葉で語れることなどほとんどありません。すみません。
MDはソニーが独自に開発した企画で、CDと同じ光学ディスクの一種ですね。
開発の時点で「カセットテープに取って代わるものを」という命題があり、「録音可能なメディア」として作られました。
デジタル情報を記録するMDは、音の劣化や再生速度の不安定さ、特定の曲へのアクセスの悪さといったカセットテープが抱えていた弱点を解消していました。
1992年に製品化されると、フロッピーディスクのようなケースに入っていて扱いが楽なことや、手頃なコンパクトさもあり、若者を中心に普及が進みました。
当初はMDでの作品のリリースもありました。マライア・キャリーの2ndアルバム「エモーションズ」なんかがタイムリーに売り出されていたように記憶しています。
しかしMDは、データを軽くするために音声が圧縮されており、音質の点でCDに劣ったため、あえてMDで作品を買うメリットがあまりなかったようです。
そうしてMDは、開発時のコンセプトがそうであるように、録音の用途で使われることの方が多くなっていきます。
ところが90年代後半には、CD-Rにデータを書き込む(ようは録音)ということも徐々に一般化し、2001年にはもうiPodが発売されます。
そう考えると、MDの時代は10年に満たなかったかもしれなく、その間にカセットテープに取って代わることは完全にはできなかったようです。
むしろカセットテープにはアナログな魅力があり、今でも愛好家がいるのに対し、デジタルなMDはより高性能なものが出てくればすぐに取って代わられ、廃れていくのも早かったように思います。
そんなこんなで今ではほとんど見かけることもなくなってしまいました。
ただ、私の場合、カセットテープから一気にCD-RやiPod(MP3)に移行しましたが、MDはその間に挟まっているわけで、やっぱりその移り変わりの方が自然だったんだろうとは思います。
また、私にとっては馴染みの薄いメディアですが、人によっては多感な時期にたくさんの音楽に出会うための素晴らしいツールであったことも事実でしょう。
ちなみに、MDと同時期に発売された競合メディアとして、DCCというものがありました。
DCCはデジタルコンパクトカセットの略。
デジタル式のカセットテープといった趣のもので、DCCプレイヤーで従来のアナログカセットテープが再生できる、ということでした。
デジタルのテープというとDATがありますが、高音質が売りのDATに対しDCCは、MD同様に音声データを圧縮しており、MDより若干音が良いかどうか、くらいの認識だったと思います。
DCCはフィリップス社(また!)と松下電器によって開発され、MDと全く同じタイミングで発表されました。当時、「どっちのメディアが勝つか!?」といったトピックもありましたが、蓋を開けてみればMDの圧勝。DCCは市場からス〜ッと姿を消しました。