そしていよいよCDことコンパクトディスクの登場です。
CDは、レコードやカセットテープなどのアナログ式記録メディアとは異なり、デジタルの情報を記録するもので、以降音楽は「デジタルで録音しデジタルで再生する」というのが当たり前になっていきます。
そのメディアは光学ディスクという、光の反射具合によって情報を記録・再生する仕組みです。
後のDVDやBlu-rayディスクもこれに属するものです。
光学ディスクの「はしり」は、CDに先んじてオランダのフィリップス社とアメリカのMCA社によって発表されたレーザーディスクです。音声のみならず映像も記録できたレーザーディスクですが、その情報はアナログのものでした。
そして1970年代の後半、フィリップス社はCDの開発に乗り出します。
このフィリップスというのはカセットテープを開発しライセンスをオープンにした太っ腹な会社です。さらにレーザーディスク、CDの開発と、記録メディアにおいて革新的な役割を果たしてきました。現在では電気シェーバーや電動歯ブラシなどが主みたいですが。
フィリップスの開発にソニーも加わり、ついに1982年、主要各社が発表したCDプレイヤーと共にCDの発売が開始されました。
一番最初に生産されたタイトルは、ビリー ・ジョエルの「ニューヨーク52番街」だったというのはよく聞く話。
CDはレコードに比べ、ノイズが圧倒的に少ないこと、繰り返しの再生による劣化がないこと、ボタン操作で簡単に任意の曲を再生できること、コンパクトであることなど、一次的にはメリットと言える特徴がありました。
この新しいメディアへの期待から、プレイヤーを作るメーカーもソフトを作るメーカーも、レコードよりCDに力を入れていったようです。
日本ではちょうどバブル景気に重なるこの時期、様々なプロダクトの高性能・便利化・小型化はごく自然なニーズであり、CDはレコードの生産・売り上げを上回っていくことになります。
CDには当初の12cmディスクの他に、8cmの規格もありました。
主にシングルCDとして使われていましたが、2000年頃から「マキシシングル」といった12cmディスクでのシングルリリースが増え、8cmディスクはほとんどその姿を消してしまいます。
厚紙のペラペラした表紙に、真ん中で折るようになっている謎のプラスチックトレー…懐かしいですね。
再生にあたっては非常に優れていたCDですが、録音を出来るものではありませんでした。そういう意味ではレコードと同じですね。
ですから、CDがレコードに代わっていっても、カセットテープの存在価値は変わりませんでした。
その後、MDなるものが登場するわけですが、ついにはCDに書き込み(録音)が出来るようになる日も来ます。CD-Rは厳密にはCDとは異なるメディアですが、ほぼ同じ環境で再生も可能なため「録音できるCD」という認識となりました。もっともCD-Rは、音楽用途だけでなく広くデータを書き込むためにも使われましたが。
さて、ポスト・レコードの未来的メディアだったCDも、2020年現在、いよいよその役目を終わろうとしています。
現在はもうほとんど、CDという「モノ」で音楽作品がリリースされそれを購入して聴く、という文化から、mp3などの音楽データをダウンロードして聴く、という文化に移り変わっています。いや、サブスク(サブスクリプション・サービス)に至っては、特定の曲やアルバムを購入する、という概念すら無くなってしまいました。
それでもここ日本では、今もなおCDでの新譜リリースがあります。
おそらくは海外ではCDはとっくに「過去のもの」となっているでしょうけど…。
この「CDを生産・販売することを続ける日本」については、いろいろな見方、考え方があるでしょうが、個人的には「いいこと」なんじゃないかと思っています。
今やサブスクも含め、レコード、カセットテープ、CD、ダウンロード…と様々な買い方・聴き方があるわけですが、私が「この曲が(このアルバムが)聴きたい」と思ってお金を払って買うのはCDで、です。(DJやサンプリングをしなくなってから、レコードを買うこともほとんどなくなってしまいました。)
けっきょくはCD世代とでも言いましょうか、ね。
でもまぁ、これは時間の問題だとは思っています。
物質的な魅力はやっぱりレコードの方がありますし、便利さで言ったらサブスクなんてヤバイくらい便利ですから。
その間に位置するCDは、利便性を求める多くのユーザー、アナログな質感を求めるユーザー、大きなジャケットにこだわるユーザー、収集家…いずれにとっても中途半端なものになっていくでしょう。
そう考えると、
いずれ消え行くことが見えていながら、つかの間、余韻に浸っているかのような…。
ちょっと寂しいですね。
やっぱり私は、モノとしてのレコード、モノとしてのカセットテープ、モノとしてのCDが好きです。