ジャズの偉人をご紹介。
1人目はこの方
エリック・ドルフィー
です。
1人目がエリック・ドルフィーかい?と思われるかも知れませんが、やっぱり好きなので。
私がエリック・ドルフィーを知ったのは10代の終わりでした。
当時、サックスでジャズっぽいものが吹きたいと思っていましたが、なにしろ分からないことだらけで、もっとも有名どころのチャーリー・パーカー(アルトサックス)やジョン・コルトレーン(テナーサックス)を、「正直よく分からない」と思いながら聴いてみるくらいが精一杯でした。
まだ、サックスといえば、チェッカーズやバービーボーイズの方が身近に感じられていたし、デヴィッド・サンボーンやケニーG、当時出たてだったキャンディ・ダルファーなど、フュージョン、スムースジャズ、ジャズファンクといった派生およびミクスチャーなスタイルと、オーセンティックなモダンジャズとの区別もさほどなく、「サックスが入っているからジャズっぽい」くらいにしか思っていませんでした。
そんな頃、背伸びして出入りしていた(笑)お店のマスターが高級なアンプとスピーカーで「これを聴け」と言わんばかりにかけてくれたのが、エリック・ドルフィーの「LAST DATE」でした。
のっけからバスクラリネットの嘶くようなカデンツァから始まるライブ盤。
奇才エリック・ドルフィーがオランダで、現地のラジオ番組用?かなんかにオランダのミュージシャンと演奏したものです。
じつドルフィーは、このライブ演奏の1ヶ月後には36歳という若さでこの世を去ってしまいます。
最後の作品なので「LAST DATE」。
自らの死を予感していたかどうかは分かりませんが、彼の演奏はヒリヒリと刺激的で、初めて聴いたその音に私はすぐに夢中になったのです。
エリック・ドルフィーはバスクラリネットの他にアルトサックスとフルートを、いずれの楽器も意のままに操るマルチプレイヤーであり、正式な音楽教育も受けていながらに非常に独創的でアバンギャルドなアドリブを展開する、才能溢れるジャズミュージシャンです。
ビバップを高速に吹き崩し、激しく跳躍し、ときにリリカルに歌うフレーズ…。
パーカーやコルトレーン(晩年より前の)も私にとって難解すぎるものでしたが、ドルフィーのそれはおそらく???すぎて、すぐに理解しようとすることを諦め、ただただ興奮したのだと思います。
その方がよっぽど本来の音楽の聴き方だとも、今は思えますが。
しかし、その後になって聴いた阿部薫(アルトサックス)などのフリージャズは、そのアバンギャルドさにほのかな憧れを抱きつつも、本心からは夢中になれませんでした。
やっぱり自分には、「枠があり、それを壊すか壊さないかのキワで行う表現」の方が面白いということなのかも知れません。
ともあれ、ドルフィーの影響でフルートも吹き始め、ドルフィーをきっかけにモダンジャズに入っていけたような気がします。
きっかけがドルフィーってのはちょっと変化球かも知れませんが、そのことが今の私の音楽観を作っている要素の1つだと思います。
本当にどの演奏も(スタジオ録音もライブ盤も)素晴らしいです。アルトサックス、フルート、バスクラリネットの持ち替えも、やっぱりそれぞれの楽器ならではの演奏になっていて素晴らしい。それでいて、どの楽器でも一聴してドルフィーと分かる独創性!素晴らしい。
ドルフィーの演奏スタイルの正統なフォロワーは私が知る限りいないのですが、いるのかな…。
マインドというかアティチュードを受け継いでいるミュージシャンはいるでしょうけどね。
「LAST DATE」の一番最後には、
「When you hear music, after it’s over, it’s gone in the air. You can never capture it again.」
~音楽は一度奏でられると、空中に消えていき、二度と取り戻すことはできない~
というドルフィーによる有名な言葉が入っています。
解釈はいろいろあると思いますが、なんとも含蓄のありそうなお言葉。