前回のつづきです。
なんであってもいきなり事を成すのは大変で、簡単なことからの積み重ね(ステップアップ)が、けっきょくは一番近道だ、ということを多くの方は知っています。
頭ではそれを理解しながらも、誰しも「すぐにでも」こんな曲が演奏したい、あんな風に演奏したい、という欲があるわけです。
目標設定と、現状把握、そして目標に近づくためには何をしていくべきか。
この3つを客観的に考えられる人が、もっとも上達するタイプです。
逆に高い目標だけしか見えていない人は、なかなか上達しない、と思い悩みがちです。
ちょっと話がそれました。
さて現状では、
およそ「高速であるため」一曲通して間違えずに演奏しきることは困難
だとしましょう。
途中で何度も間違えてしまう。つっかえてしまう。
だからテンポをググ~~っと落としていきます。
元のテンポの半分か、場合によってはそれ以上かもしれません。
「演奏の間違い」は、ほとんどが時間的制約が厳しいことから起こりますので、その制約を可能な限り緩くしていきます。
次の音を考え、確認し、正確に運動できるくらいの猶予を設けていきます。
その状態で、気を抜かずに演奏すれば「間違えない演奏」が成せるはずです。
この「間違えない演奏」が一度できてしまえばあとは簡単で、目標のテンポに向かい徐々にテンポアップしていきます。
と言うか、間違えない状態が固まってしまえば、ほっといてもテンポアップしていくはずです。
楽器の演奏に限らず、淀みなく行える運動は高速化していきますので。
演奏したい曲の元のテンポで、何度も何度も間違え、悶々としながら繰り返す練習より、いったん確実に(間違えずに)演奏できるテンポまで落とし、それを元のテンポまで引き上げていく方が早いということですね。
人によっては、焦れったいでしょう。
自分がしたいのはこんなのじゃなくて、もっとアグレッシブでカッコいいやつなのに……。
と、モヤモヤもするでしょう。
そこをグッと堪えてやれるかどうか、なのですが。
もう、騙されたと思ってやってみてください、と言うしかないです。
これが間違えないで演奏できるようになる唯一の方法だ、と言うつもりもないのですが、多くの人にとっては有効なはずです。
ただ、これにはひとつ問題があります。
「極端にテンポを落とした際に、元の曲がイメージできなくなり、次の音に移るタイミング、つまりリズムが分からなくなってしまう」ということが起きる可能性があるのです。
テンポとリズムについて深い理解があれば、テンポを変えた際の相対的な音価(音や休みの長さ)の伸び縮みが分かりますが、初心者の方にはちょっと大変だと思います。
どうするか……。
つづきます。w