鍵盤楽器のご紹介その④は、
シンセサイザーです。
前回、広義には「電子楽器(エレクトロニックインストゥルメンツ)」=「シンセサイザー」だと言いましたが、今回は狭義の、いわゆる鍵盤のシンセサイザーです。
定義としては、電子ピアノや電子オルガンのように「ある音色」に特化したものではなく、ユーザーによっていろいろに音色が加工できる電子鍵盤楽器といったところです。
では、いってみましょー。
・アナログシンセサイザー
1930年頃、テルミンなどの発音原理を発展させた、波形を発信するオシレーターが作られました。そののち、波形を加工するフィルター、アンプ部分、LFO(ローフリーケンシーオシレーター)、エンベロープジェネレーターといった現在のシンセサイザーにある機能が付け足されていきました。
それらの機能は独立したユニット(モジュールと言います)に分けられ、それをパッチング(必要に応じて結線・つなぎ変え)して使いました。
1960年代にはロバート・モーグ博士による、前述の機能が一通り揃った「モーグ・シンセサイザー」が生まれ、70年代には主要なモジュールと鍵盤がコンパクトなボディに詰め込まれた「ミニモーグ」が誕生します。
初期のシンセサイザーはモノフォニックといって、一度に複数の発音をすることができませんでした。1音だけだった。80年代になると、ポリフォニック(複数の音を同時発音できる)シンセサイザーが生まれます。5つの音を同時に鳴らすことができる、その名も「プロフェット5」などがそれです。
・デジタルシンセサイザー
前述のアナログシンセサイザーが、トランジスタなどのアナログ電子回路によって発音していたのに対し、80年代になるとデジタルのシンセサイザーが出てきます。
FM音源という発音の方式でヤマハから発売された「DX7」は、その時代を象徴する個性的なサウンドを奏でました。
しばらくすると、今度は実際の生楽器をサンプリングして音源とする「PCM音源」なるものが生まれ、コルグの「M1」などをはじめ、以降多くのシンセサイザーに採用されました。
また、アナログシンセのサウンドや操作感を求めるニーズに対し、それをデジタルで再現した、バーチャルアナログシンセというものが作られます。リアルのアナログに比べ電圧による不安定さなどがなく安定しています。クラヴィアのノードリードに代表されるこの種もそののちのスタンダードになっていきます。
・シンセベース
ベースというと4弦の楽器が一般的ですが、シンセサイザーを使ってベース音を作り演奏する、というのも今や全くめずらしくなくなりました。
ややこしいですが、ベースシンセというものもあり、そちらはいわゆるベースの形をしていて弦を弾いて演奏しますが、シンセベースは鍵盤操作で演奏します。
さほど音域を必要としないので、鍵盤は2オクターブほどしかありません。
普通のシンセサイザーでもベースサウンドは作れますが、それに特化した楽器がシンセベースです。
・ヴォコーダー
声を加工して鍵盤演奏できるようにした楽器です。
楽器に付いているマイクに向かって喋り(歌い)、その言葉の成分は残しつつ異なる音色を足してサウンドを作ります。そして鍵盤で演奏します。
ロボットのような歌声になり、ディスコミュージックやテクノなどでよく使われました。
といったところで、長かった鍵盤楽器のご紹介は以上です。
いかがだったでしょうか。
鍵盤楽器といってもじつにいろいろありましたね。
当たり前ですが、いずれの楽器も演奏するにあたっては鍵盤操作ですので、違いはというと、主に発音の仕組みからくる音色ということになりますかね。
鍵盤は、音楽を構造的に理解するのに、とっても分かりやすい楽器だと思います。
歌や管楽器などをやられている方も、というかそういう方はとくに、鍵盤を触っていくことをおすすめします。