はい。鍵盤楽器のご紹介その②は、電気を使う鍵盤楽器です。
これまた区別がつきにくく、一括りにキーボードとかになりがちですが、ちょっと整理しながらいってみましょう。
ひとくちに電気を使う楽器といっても、じつは「アコースティックな仕組みで鳴らした音を電気を使って大きくしている楽器」と、「電子回路によって電気信号を発している楽器」とに大きく分けられます。
前者を「電気楽器(エレクトリックインストゥルメンツ)」、後者を「電子楽器(エレクトロニックインストゥルメンツ)」と言います。
この違いはけっこう大事です。
よく混同されがちですが、電気ピアノと電子ピアノはまったく違うものなのです。
ではまずは「電気楽器(エレクトリックインストゥルメンツ)」から。
もう少しこの仕組みを捕捉すると、エレキギターを思い浮かべていただくと分かりやすいと思います。
あれは弦を弾くと物理的振動により発音します。でも、アコースティックギターのようにその音を十分に響かせるボディ(空洞)がない(空洞があるエレキギターもありますが)ので、その音量はたいしたものではありません。その小さな音をピックアップという(振動を電気信号に変える)もので拾い、それをアンプで大きくして鳴らします。電力はこのアンプでの信号の増幅に使われます。
そんな仕組みの鍵盤楽器がこちらです。
・電気ピアノ(エレピ)
仕組みは前述のとおりエレキギターと同じですが、元の発音に関しては前回のアコースティックな鍵盤楽器同様いろいろな種類があります。(ピアノそのままに弦をハンマーで叩くものや、金属板をハンマーで叩くものなど。)
代表的な電気ピアノは、ローズ(Rhodes)の一連のシリーズ、ウーリッツァー社のもの、ホーナー社のもの、ヤマハのCP-70およびCP-80、コロムビアのエレピアンなど。
ドラムやアンプリファイされたギターやベースなど、大音量の楽器にピアノの音が埋もれないようにという意図で作られたり、使われたりした経緯はありますが、今現在はその独特な音色を好んで使う人が多いみたいです。
ジャズ、ポップス、ロック~ヒップホップと様々なジャンルでその音を聞くことができます。
でも、そのほとんどは今は作られていません。
ローズ Mk-1
ウーリッツァー 200
ヤマハ CP-70
・クラビネット
チェンバロに似た発音の仕組みを持つクラヴィコードというアコースティックな鍵盤楽器に、エレキギターで使うようなピックアップを付けた楽器です。
ホーナー社の開発によるものです。
歯切れのいい音色で、ソウルやファンクなどのジャンルでよく使われています。
・ハモンドオルガン
ハモンドという人がパイプオルガンの発音の仕組みの代わりに、歯車を回してピックアップで音を拾うという電気オルガンを作りました。
仕組みが全然違うのにパイプオルガンみたいな音になったんだそうです。
パイプオルガンと同じように倍音を重ねるためのドローバーというのが付いています。
その後、音がうぉんうぉん揺れるレスリースピーカーなるものが付けられ、ジャズ、ロックなど幅広いジャンルで使われてきましたが、大きくて重たいこの楽器はやがてシンセサイザーが生まれると徐々に廃れ、生産が終わってしまいました。
代表的なのはB-3という型番のものです。
・メロトロン
これはとってもユニークでマニアックな楽器です。
テープに録音したいろんな音を鍵盤を使って演奏する、というものです。
いわゆるサンプラーのはしりの楽器とも言えます。
当然のように、シンセサイザーやサンプラーが世に出てきてからは消え去ってしまいました。
こうしてみると、ほとんどの楽器は生産が終わっていますね。
それなりに個性的な音色や触り心地を持っているので、一部では重宝され続けていますが、作る側からも使う側からも「よりコンパクトで、より軽く、低コスト、多機能、高性能を」と求められていくのは、これは楽器に限ったことじゃないと思いますが、「電化」したもののさだめでしょうね。
ちなみに私は「一部で重宝され続けている」の「一部」ですので、これらの楽器や音色は大好きです。
ということで今回は「電気(エレクトリック)」の鍵盤楽器でした。
次回は「電子(エレクトロニック)」の鍵盤楽器です。
あ~~ややこし。