さて今日は私的名曲選、いってみましょう。
今回の曲は…
「What’s Going On」
です。
はい、これまた私的と言うより、超ベタな大名曲ですね。
オリジナルは1971年にモータウンレーベルから、ソウル/R&Bシンガーのマーヴィン・ゲイの作品としてリリースされました。
シングル曲としてだけでなく、アルバム「What’s Going On」(同タイトル)のリード曲としてコンセプチャルな大名盤の幕開けを飾っています。
当時、すでにモータウンレーベル内とR&Bのチャートアクションで確固たるポジションを築いていたマーヴィン・ゲイですが、最良のデュエットパートナー、タミー・テレルの死に塞ぎ込んでしまいます。
時はベトナム戦争の真っ只中。
マーヴィンは戦争から戻った弟の体験談に触発され、それまでと異なるアプローチ(セルフプロデュース)でリード曲「What’s Going On」の制作をします。
そして前述したようにアルバム「What’s Going On」は、戦争や貧困などの社会情勢に対しての思いを等身大の言葉で紡いだ、非常にコンセプチャルな作品になりました。
今や楽曲「What’s Going On」もアルバム「What’s Going On」も、時代やジャンルを超越した名曲・名盤となっています。
この曲はマーヴィンと、フォートップスというコーラスグループのレナルド”オビー”ベンソン、さらにモータウンレコードのソングライターだったアル・クリーヴランドの3人による共作です。
制作過程の分担についてはっきりとは分かりません。でも、それまではレーベルに用意された曲を歌っていたマーヴィンが、積極的に制作に関わったことは後のソウルシンガーに大きな影響を残しました。
歌詞は直接的ではないにしろ、はっきりとベトナム戦争への反戦を歌っています。
You know we’ve got to find a way
To bring some loving here today.
Talk to me, so you can see what’s going on.
What’s going on.
ここでのWhat’s going onは「よう、調子どう?」という挨拶ではなく「いったいこの世界で何が起きてんの?」という訴えの意味合いが強いらしいです。
ところが曲は、黒人男性が数人「よう、調子どう?」みたいな話をしているところから始まります。
そこに、モータウンの楽曲プロダクションそしてマーヴィン・ゲイにとってもキーパーソンであるジェームス・ジェマーソンによるベースと、哀愁漂うソプラノサックスが入ってきます。このベースラインは、ある意味この曲の顔と言ってもいいくらい。
歌い出すとマーヴィンのヴォーカルはシルクのように滑らかです。
バックにはコーラスと、レスポンス(合いの手)が。
このゴスペルのようなコーラスワークとコールアンドレスポンスがこの曲の肝ですね。
ジワジワと熱量が上がっていきます。
コード進行はとくに奇をてらった感じではありませんが、サビにあたる「What’s Going On〜」のリフレインに続くスキャットパートへは転調があります。
スキャットパートの終わりの方でまた転調し元のキーに戻るのですが、ここ、上手いですよね〜。そのうち真似したい。
全体を包むようなストリングスの優しさ、リズミカルなコンガなどすべてが極上です。
名曲!!
この曲ももちろんたくさんのカバーを生みましたが、とくにシンディ・ローパーによるカバーが印象的です。
というかじつは私は、マーヴィンのオリジナルよりシンディのアルバム「True Colors」で先にこの曲に出会っていたのです。
だから思い入れも強いのですが、シンディのヴォーカルはいつもながらホントに素晴らしいです。