さてひさしぶりの私的名曲選。
今回は
「I Can See Clearly Now」
です。
オリジナルはアメリカのシンガーソングライター、ジョニー・ナッシュ。
彼は50年代の終わりから60年代前半にかけてはアメリカで活動しましたが、のちにジャマイカに移住してジャマイカンミュージックを積極的に取り入れていきます。
外国人としてはかなり早い段階からロックステディやレゲエに着目し、ボブ・マーリーなどのジャマイカのミュージシャンと交流を持ちました。
そんな彼の全米No.1の大ヒットになった曲が1972年リリースの「I Can See Clearly Now」です。
オリジナルは大ヒットを記録しましたが、私が最初にこの曲を聴いたのはジミー・クリフのバージョンでした。
ジミー・クリフはボブ・マーリーに並ぶ国際的に活躍したジャマイカ出身のレゲエシンガー。
その彼が歌うこの曲が1993年公開のディズニー映画「クールランニング」の主題歌だったのです。
「クールランニング」は冬季オリンピックのボブスレーという競技に雪の降らないジャマイカのチームが挑む、という笑いあり涙ありの(実話を元にした)傑作。
ここで流れる「I Can See Clearly Now」が、これしかない!というマッチングで素晴らしいんです。
クリフは60年代から活躍し、たくさんのヒット曲がありますが、この曲は90年以降の彼の代表曲でもあると言っていいと思います。
のちにキムタク主演のドラマ「エンジン」のエンディング曲にもなっていました。
I can see clearly now the rain is gone
(雨が止んで目の前がはっきり見える)
という歌詞から始まり
It’s gonna be a bright, bright sun-shining day
(陽の光が眩しい明るい日になる)
という歌詞はシンプルでポジティブなメッセージ。
コード進行もとてもシンプルですが、キーにおいての♭Ⅶのコードが何度も使われています。モーダルインターチェンジ(借用和音)というやつですが、なんとも潔く自然な使われ方です。
ヴァース、コーラスではマイナーコードはまったく出てきませんが、中盤にあるブリッジではここぞとばかりに登場し、調性(キー)もかき回されます。重なるコーラスも美しいこのブリッジがこの曲の完成度を押し上げていると思います。
カバーはやはりジミー・クリフのバージョンがもっとも有名でしょう。
他にも多くのアーティストがカバーしているとは思っていましたが、調べてみるとメチャクチャたくさん出てきてびっくり!
デニス・ブラウン、ガーネット・シルク、アスワド、マキシ・プリースト、ジャネット・ケイなどレゲエ勢は元より、セルジオ・メンデス、KC&ザ・サンシャインバンド、ソニー&シェール、ナンシー・シナトラ…枚挙にいとまがないとはこのことですね。
いろんな解釈、アレンジで演奏されていてもどれもポジティブなエネルギーに満ちていて、この曲の懐の広さを思い知らされます。
中でもお気に入りはジャズシンガーのホリー・コールのバージョンで、その昔ミックステープに収録させていただいたことがあります。
淡々としたベースにたゆたう歌声が心地いい。そして徐々に力強く、スケールが大きくなっていきます。
うーん。名曲!