チューニングの話のついで?に平均律と純正律についても触れておきます。
平均律(十二平均律)
平均律は1オクターブを12等分してその1つを半音とする音律(≒チューニング)です。
1オクターブを12等分。
非常にシンプルで分かりやすいですね。
しかし、響きとして「それ」がベストかというと、必ずしもそうじゃなようでして。
音というのは空気の振動です。その振動の波を我々の鼓膜が感じ取って音として聴こえる(認識する)ことができるわけです。
2つの音、つまり2つの波が同時に発生したとき、その2つの波の周期(周波数・振動数)が同じだったら完全に同調して1つに感じられることになります。
ところが、この2つの周期が少し違う(ズレた)だけで一気に調和が崩れてしまいます。
1つの波が1秒間に10回波打つのに対し、もう1つの波は11回波打つようなイメージです。
それよりは、例えば1つが10回に対しもう1つが20回のときの方が調和がとれていることになります。
かたや10:11。かたや10:20、つまり1:2ですから。
そういったシンプルな周波数の比率になる関係は、実際に音を聴いたときにもとても純粋な響きになっています。
具体的には、2つの音を鳴らしたときに「うねり」が起きない。
で、平均律。
1オクターブを12等分した場合のそれらの周波数の比率は、じつは結構複雑になってしまうんです。
響きが良いとされる3度や5度の音程でも少しうねっている。
純正律
その周波数比率をシンプルにしたものが純正律です。
だから純正律の方が美しいと考える人はたくさんいます。
実際、弦楽器の管楽器のアンサンブルや合唱などで音程をとるときは純正律で、つまりうねりのない純粋な響きを求めていきます。
ただ、純正律は周波数比率をシンプルにした結果、1オクターブを12で割ったときの間隔はほんの少しだけ不均等になるわけです。
ピアノやギターなどの楽器で、何かの音を基準に純正律でチューニングしてしまう(ギターの場合、フレットの間隔もそれに準じることになります。)と、そのキーでしか演奏できなくなってしまいます。曲中の転調もできない。
ですから一般的には、ピアノやギターなど現代の楽器の多くは平均律でチューニングされています。
チューナーも平均律です。
チューナーの針ド真ん中が平均律でのジャストピッチです。
ちなみにチューナーによっては、真ん中から少しだけ離れた左右に小さな三角の印がついているものがあります。
じつはこの印、純正律での長調の第3音(左側の印)と短調の第3音(右側の印)の音程を示しています。
先に申し上げたとおり、
平均律は厳密に言えば少しだけ響きが濁っていることになります。
その「少し」を犠牲にして利便性を優先させたということですね。
ただ私の耳では、平均律でチューニングされ演奏された音楽を「濁っている」と感じることはありません。
物心ついてからずーっと平均律の音楽を耳にしてきた結果かもしれません。
しかし、そんな耳でも純正律の音楽を聴くと、やはり美しいとは感じます。
平均律と純正律はしばしば対立項として語られますが、個人的には、どちらが良い悪いということもないかな…と思っています。適材適所と言うか…。