私的名曲選、今回は…
「It’s a Shame」
です。
この曲はアメリカのコーラスグループ、スピナーズ(Spinners)による1970年のヒット曲。
ヒット曲とはいえ今までここでご紹介した曲に比べると、ソウルミュージック好きの方以外にはさほど知られていないかもしれません。
個人的には学生のころに、DJをしていた友人がよくかけていて、ピークタイムにこの曲がかかると一緒になって歌っていた思い出の曲です。
スピナーズはデトロイト出身で、「It’s a Shame」は地元モータウンレーベル在籍時の彼らの代表曲ですが、その後はフィラデルフィアに移りアトランティックレーベルからいわゆるフィリーソウルのムーブメントに参加します。
フィリーソウルは流麗なストリングスやブラス、コーラスが綿密に重ねられた音楽。もちろんこれはこれで素晴らしいのですが、モータウン期の「It’s a Shame」はもっとハツラツとした印象です。
コンポーズ、アレンジ、ヴォーカルと全てがとにかく素晴らしい。
イントロのギターからもう掴みバッチリでしょう。
そこからヴァース(ヒラ歌)に向けて一気に流れ込んでいきます。
2回し目のヴァースへ、さらにコーラス(サビ)へと一層音が厚くなりテンションも上がっていきます。
コーラスワークとブラスの絡みが素晴らしい。
途中のブレイク(リードヴォーカルとドラム、ギターだけになるとこ)も曲の良いアクセントになっています。
細かいクレジットは分かりませんが、演奏はもちろんファンクブラザーズ(モータウンのセッションバンド)ですから最高です。
コード進行は ⅱ – Ⅴ – Ⅰ – ⅵ の循環が基本でシンプルですが、サブドミナントマイナーや同主調の平行調への一瞬の転調がマジカル!
それもそのはず、作曲はスティービー・ワンダー。と、ちょうどこのころスティービーと結婚したシンガー、シリータ・ライトによるもの。
スピナーズは何度かメンバーチェンジがありリードヴォーカルも代わっていますが、この時期はG.C.キャメロンという人がリード。
このキャメロンさんの、美しいファルセットとチェストボイスでの熱いシャウトのコントラスト唱法がヤバい。
これら全ての要素が聴く者を否応なしに高揚させることでしょう。
It’s a shame とは、「残念だ」という意味らしい。
歌詞は、彼女に対して「ひどいよ、あんまりだよ」と嘆いている内容。
歌詞についてはこれといって何もないのですが…。
曲のタイトルから歌い始めるっていうのは分かりやすくていいですね。
はい、名曲!
この曲はやっぱりスピナーズのオリジナルが最高ですが、カバーもご紹介しておきます。
ポール・ジャクソン Jr.
カッティングの名手による小気味いいインストバージョン。
アルトン・エリス
大好きなジャマイカのソウルシンガー。このカバーは◎。
ラファエル・サディーク
比較的原曲のイメージに忠実なカバー。
モニー・ラヴ
ラップ。
EPO
ドラムの音色が時代ですが、EPOさんらしくていい。