今回は、あらためて 「楽譜どおりに演奏するだけでは、音楽の楽しさは半分しか味わえない(かもしれない)」 という話を書きたいと思います。
まず最初に誤解なきよう、大事なことをお伝えします。
初心者の方は、まず楽譜どおりに演奏することを目指して大丈夫です。
むしろ、その達成感をしっかり味わってほしいと思います。
正しい指使い、正しいリズム、正しい音程…
これらを一つずつクリアしていき1曲を演奏しきることは、音楽を始めたばかりの方にとって大きな喜びであり、自信につながります。
料理で言えば、レシピどおりに作って「美味い!ちゃんとできた!」となるあの感じです。
この段階はとても大切で、飛ばす必要はありません。
でも、ある程度弾けるようになってきたら、楽譜どおりに間違えずに弾くことだけを目標にしてしまうのは、実にもったいないことです。
なぜならそれはだんだん、音楽ではなく「音ゲー」になっていってしまうからです。
音楽に合わせてタイミングよく指定されたボタンを叩くアレです。
音ゲーは楽しいですが、そこに「表現」はありません。
「あなたの演奏、音ゲーになっていませんか?」
この問いかけは、経験者の方ほどドキッとするかもしれません。
音ゲーじゃないとすれば、スポーツ的と言ってもいいかもしれませんね。
楽譜どおりに演奏する練習は大切ですが、それだけでは音楽がどんな材料でできているのかが見えてきません。
レシピどおりに作るということを繰り返しているだけでは
「この味は何でできているんだろう」
「どんな調味料がどんな配分で使われているんだろう」
といった「味の理由」まではなかなか分かりません。
美味しい料理を食べたとき、その味の正体を想像できるようになると、自分の料理にも活かせるようになりますよね。
余り物の具材で美味しい料理を作ったり、レシピを自分なりに改良したり、完全にオリジナルな料理だって作れます。
食べた料理を再現するのも容易になります。(これはレシピを見なくても食べた料理を再現できる、ということです。)
でもその感覚は、レシピをただ再現しているだけでは育ちません。
音楽もまったく同じです。
音楽の材料とは、例えばこんなものです。
・音名や階名、音の並び方
・コードの種類や成り立ち
・キーとはなにか
・リズムの組み立て方
・メロディの動き方
・緊張と緩和のコントロール
・反復と変化
・その他の曲の雰囲気を作る要素
こういった材料のことが分かってくると、演奏の自由度が一気に広がります。
「悲しい雰囲気のコードは“マイナーコード”と呼ぶんだ」
「マイナーコードって、こういう音の組み合わせなんだ」
こういう小さな知識だけでも、曲の聴こえ方や感じ方がガラッと変わります。
ここで誤解してほしくないのは、「音楽理論をしっかり勉強しましょう」という堅い話ではないことです。
料理だって、みんなが料理学校に通って勉強するわけではありません。
でも、さっきお話ししたようなことを意識しながら作っていくうちに「この甘さはみりんだな」「この香りはバターとにんにくだな」と分かることもあります。
まずは意識の問題だということを強くお伝えしたいです。
音楽も同じで、少しずつ材料の名前や役割が分かってくると、演奏が生き生きとしてどんどん楽しくなります。
材料のことが分かると、表現が変わります
例えば管楽器だと
「ここはマイナーだから少し切なく吹こう」
「このコード進行は物語の着地に向かっているから、ダイナミックに吹こう」
「このフレーズのリズムだと、跳ねるように軽やかに吹こう」
といった 表現の理由づけができるようになります。
これは、楽譜どおりに弾くだけではなかなか身につかない力です。
とくにジャズやポップスの楽譜にはいわゆる発想記号が書かれていませんから…。
ただ、これはどういうことかというと、演奏者に委ねられているということです。
間違えずに吹ければOKということではないのです。
楽譜どおりに弾くことは大切です。
でも、いつまでもそれだけでは音ゲーやスポーツになってしまい、音楽の「味の理由」が見えてきません。
少しずつでいいので音楽の仕組みに触れていくと、演奏の世界が広がり、音ゲーでは味わえない「自分の音楽(表現)」が生まれてくると思います。
楽譜はレシピのようなものです。
そこからどうアレンジするかは、あなたの自由なのです。